この記事では、翻訳するExcelファイルから、原文だけではなくIDやコメントも同時にmemoQへ読みこむ方法を紹介する。
概要
筆者は主にゲーム翻訳を手掛けているのだが、ゲーム翻訳においてクライアントから渡される原文ファイルは、以下のような形式になっていることが多い。
左から、1の列がID、2の列が原文、3の列が訳文、4の列がコメント用のセルになっている。
今回焦点を当てたいのは1の「ID」と4の「コメント」だ。
IDとは
1の列に記述されているテキストが「ID」だ。memoQにおいては「コンテキストID」と呼ばれる。基本的には、同じ行に入っている原文テキストがどんな場面で使われるどんな種類のテキストなのかを示しているが、たまにまったく意味のない英数字になっていることもある(その場合は頑張ってゲーム本体や動画を見て確認するか、開発やPMに質問するしかない)。
記述の法則はゲームによって様々なので、サンプルのIDは参考程度に見てほしい。
コメントとは
4の列に記述されているテキストが「コメント」だが、必ずある項目ではなく、そもそも原文ファイルに存在しないことも多々ある。親切なクライアントなら、このセルに元ネタの有無や伏線の解説、翻訳する上で気をつけるべき字数や表記、表現の注意点などの文脈情報を書いてくれる。位置は状況によってまちまちで、サンプルでは訳文セルの隣にあるが、原文セルの隣にあることも。
コメントは大きく分けて
1)開発側からのコメント
2)疑問点や訳文作成意図の説明などを伝える翻訳者側からのコメント
この2種に分かれるが、本記事ではmemoQへの原文インポートについて解説するため、1)のコメントのみを扱う。
こういったID、開発からのコメントなどの文脈情報は翻訳する上で重要だ。しかし翻訳支援ソフトに原文だけ読み込んだ場合、確認するにはオリジナルのExcelファイルを見るしかない。そのためにいちいち別ウィンドウを開くのは手間だ。原文・訳文を扱う翻訳支援ソフト上で表示・確認できるなら、それに越したことはない。
そして嬉しいことに、翻訳支援ソフトであるmemoQには、IDやコメントなどのコンテキスト情報を原文と一緒に読みこんで表示してくれる機能がついている。
この記事では、この機能を活用するための手順を解説する。
手順
以下が、ExcelファイルからmemoQにIDとコメントを読みこむための具体的な手順だ。
- 「インポート」>「オプションを設定してインポート」を選択
- インポートオプション画面で「フィルタと構成を変更」を選択
- 「文書のインポート設定」内の「インポート可能範囲と一般オプション」タブで原文の範囲を指定
- 「コメントとコンテキストオプション」タブでコメントとIDの範囲を指定
- インポートする
解説
1.「インポート」>「オプションを設定してインポート」を選択
まずは原文ファイルをmemoQに読み込む。
IDやコメントも同時に読み込む場合は、ドラッグ&ドロップや通常のインポートを使うのではなく、インポートアイコン下部の三角マークをクリックすると出てくる「オプションを設定してインポート」を選ぼう。
2.インポートオプション画面で「フィルタと構成を変更」を選択
「オプションを設定してインポート」をクリックすると「文書のインポートオプション」ウィンドウが開く。
ウィンドウの下部に「フィルタと構成を変更」という項目があるので、それをクリックしよう。
3.「文書のインポート設定」内の「インポート可能範囲と一般オプション」タブで原文の範囲を指定
まずは原文として読み込むテキストのセル範囲を指定する。「フィルタと構成を変更」すると「文書のインポート設定」ウィンドウが開く。この中の「インポート可能範囲と一般オプション」タブを選んで、「範囲を除外する/含める」>「指定した範囲だけをインポート」で読み込む範囲を指定しよう。
ここで範囲指定をしておかないと、IDもコメントもすべて一緒に原文として読み込まれてしまうので注意すること。
4.「コメントとコンテキストオプション」タブでコメントとIDの範囲を指定
原文の範囲指定をしたら、次は「コメントとコンテキストオプション」タブでコメントとIDの範囲を指定する。「コメントをインポート」、「コンテキストIDをインポート」にチェックを入れて範囲を指定しよう。
画像では「相対位置」で範囲を指定した。この方法では、インポート範囲に指定した位置を0として、左側の列はマイナスの数値、右側の列はプラスの数値で位置を指定できる。
今回は、原文セルの左隣にあるIDセルの位置を「-1」、ふたつ右隣にあるコメントセルの位置を「2」として指定した。他にも「カスタムルール」から、特定の範囲だけを指定することも可能だ。
5.インポートする
読み込む原文、ID、コメントの範囲をそれぞれ指定したら、あとは「OK」を押してインポートすれば読み込みが完了する。
正しくインポートできれば、IDの情報が画像のように画面右下の「コンテキスト」の右側に表示される。
コメントがうまく読み込まれれば、セグメント右端のコメントアイコンが黄色に変わり、クリックすれば画像のようにコメント内容が表示される(コメント内容は、アイコンにマウスオーバーしても表示される)。